母の日・父の日をまとめて


 我が母は小生が子供のころはたいへん厳しかった。小生の顔を見れば「勉強しろ!」
「勉強しろ!」が口癖で、マンガやテレビを見ていると殴られた。母本人は決して
高学歴でもない。なぜここまで「勉強」に厳しかったのかというと、これも口癖の
ように言うのだ。
 「頭が悪いと戦争になったとき、必ず危険な前線に送られる。頭が良ければ、国内の
工場で技術職として働ける。」今のところ戦争はないが、母なりの我が子に対する愛情
だろう。

 球技に興味のない我が一家では、父子のキャッチボールなどはない。男の子は案外
父親と会話することは少ない。父からはスキーを教えてもらった。小学生くらいでは
子供同士でプロレスごっこをしたものだ。テレビで見たややこしい関節技を掛け合って
どの程度痛いか試したりした。「四の字極め」は誰がやっても強烈に痛い。コブラツイスト
は体の柔らかい小学生にとっては、どこがギブアップするほど痛いのか分からない。
打撃は危険なので使わないのが暗黙の了解。やる場合はスローモーションで打ったマネ
をするだけだ。
 そんな中、寝床で父とちょっとしたプロレスごっこをする。父は小生の足をとって
巻き込むように引き込む。「どうだ、まいったか!」「四の字極め」の厳しい痛みを
知っている小生にとってまったく生ぬるい技で痛くもなんともない。すこし足の角度を
変えればするりと脱出できる。
 今になってみれば、親は愛する我が子を本気で壊すことなんてないのだ。

 反抗する現在小学3年生の娘に名前だけは恐ろしい「地獄極め」と言って足をクロス
させても、わが娘はするりと抜けて「へへん」という顔をしている。もちろん、抜けら
れる程度の締め具合で痛くもなんともない。当たり前だが愛する我が子に本気で極めに
入る親はいない。